仙台市議の伊藤優太議員が、育休を取得。宮城県内で市議や県議の男性が育休を取得するのは初めてだったということで、
FJ代表の安藤と、FJ東北共同代表の竹下がお話を伺いました。
・伊藤優太 仙台市議
・安藤哲也 FJ代表
・竹下小百合 FJ東北共同代表
安藤 年齢や家族構成を教えてください。
伊藤 35歳です。妻と、3歳の女の子、2020年11月に生まれた男の子がいます。
安藤 育休取得しようと思ったのはいつ頃ですか?
伊藤 妻が会社員なんですが、第2子出産にあたって「育休取らないの?」と妻に聞かれたことがきっかけです。
議員として職員に育休を取るように呼び掛けてきました。でも実は、自分が育休を取るなんて考えてなかったんです。調べてみると、議員が育休を取る制度がない。疾病理由とかはあるんですが。育休は「その他の事故」という扱いになってしまうんです。それで「このままではいけない。まずは自分が取得してみよう」と思ったのが、子どもが生まれる3カ月前くらいです。子どもが生まれた11月から、部分育休も含め約2カ月間育休取得しました。
竹下 伊藤市議の育休は新聞でも話題になって、「市議が育休を申請」という記事を見ました。男性市議が育休取るのは、かなり難しいことなのだろうと思いました。
伊藤 どのくらい休んでいいのか。市民にどうやったら理解してもらえるのかと考えました。小泉進次郎議員は、国会には出ていたようですから。議決に関する部分など、どのように考えたらいいのかと悩みましたね。
安藤 市議会への出席はどのように考えていましたか?
伊藤 自分は1人会派なので。選挙で有権者が託してくださった思いもあります。ですから、議決と議案審査に極力影響しないよう育休を取得する日程を決めました。大会派の場合なら、ほかのメンバーに思いを託すという考え方もあるかもしれません。
安藤 文京区長が10年くらい前に育休取得したときも、いろいろ言われて大変でしたね。仙台での反応はどうでしたか?
伊藤 妻は「心強い」と言ってくれましたが、やはり市民の反応を気にしていましたね。議員の反応は、肯定派と否定派それぞれありましたね。
安藤 女性議員は、育休取ったことある人いるんですよね。
伊藤 はい。女性議員からは「よくやった」という感じでしたね。もちろん、厳しい意見もありました。男性の市民からは「議員が育休を取ってくれると、自分も取っていいんだと思える」という声も聞かれてうれしかったですね。
安藤 そもそも育休を取得しようと思ったのはなぜですか?
伊藤 妻から言われて、というのも大きいです。あとは、男性の育児参加を進めたいという思いもありました。
安藤 上の子は赤ちゃん返りしたりして、大変だったのでは?
伊藤 そうですね。急に夜泣きするようになったり。一緒の部屋でみんなで寝て、赤ちゃんや上の子の夜泣き対応もしました。ママのメンタルも安定していたようです。
安藤 いま「産後うつ」も問題になっていますからね。出産に関して市民から相談もあったのでは?
伊藤 コロナ禍において、相談も増えましたね。産後すぐに赤ちゃんに会えないとか。ガーゼやマスクがもっと欲しいとか。給付金をもっともらいたいなど。
竹下 我が家は1歳8カ月の子と、小4なんですが。2020年の4月から6月ごろは「児童館も休館になったりして本当にしんどかった」とママたちが言っていました。児童館が開いたとき、「大人としゃべりたかった」「この2カ月間、苦しかったー」という声が多く寄せられたと児童館スタッフからも聞きました。我が家は夫が飲食業で忙しく、ほぼワンオペ状態ですが、両親が近くにいたからよかったです。そうじゃなかったら、本当にどうなっていたことかと。
安藤 一般的にDVも増えたらしいですが、仙台ではどうですか?
伊藤 増えてますね。
竹下 男性から相談を受けることも多いです。妻から「コロナで収入が減ってる!どうするのよ!」「テレワークで在宅なら、もっと家のことをしろ!」とか。首を絞められそうになり、離婚届を叩きつけられたというパパの声もありました。
安藤 男性の育児家事については、逆にコロナが背中を押してくれたようなパパもいたようですが。逆にDVや揉め事も増えたところもあってと、二極化ですね。
伊藤 テレワークを含めて家にいる時間が長くなっていますから、家庭の悩みが表面化していますね。
安藤 男性の役割分担意識について、仙台ではどうですか?
伊藤 「男性は育児とかする必要はない」と正面切って言ってくる人はいますね。「男性議員はこうあるべき」という考え方を当てはめようとしてくる人もいます。
安藤 その考え方が、男性議員の家庭参画と女性議員の活躍を阻んでしまっているじゃないでしょうか。伊藤さん、育休中に気づいたことはありましたか?
伊藤 それまでは自分がいかに受動型だったかがわかりました。自分でフルセットやってみると、見えない家事がわかってきますね。片付け終わると、おもちゃ箱ひっくり返されたり。今までは、皿洗いとか、夜ご飯作ったとか、それだけで「やった感」を出してしまっていたなと(苦笑)。
竹下 本当に、やってみないとわからないですよね。先日も、子どもが本のカバーも全部外しちゃうから、カバーをテープで貼ってみたら、全部別々になってたんですよ(苦笑)。すごくへこみますよね。でも、そんなことも含めて夫がわかってくれると、帰ってきたときに家が散らかっていても「大変だったねー」って共感できますものね。
安藤 育休取得後、働き方に変化はでましたか?
伊藤 意識して家族の時間を作るようになりましたね。そうすると仕事の仕方や効率も変わってきます。法律の兼ね合いもありますが、オンラインで会議ができれば、育休取得も進むんじゃないかと思います。100か0かじゃなく、オンラインを使って家で発言できるなどの仕組みも必要だと思います。
安藤 取得の経験を、どう市政に活かすかですね。
伊藤 市職員の男性育休取得率は現在15%くらいですが、46%の人が「制度がよくわからずに育休を取得できなかった」と言っています。制度の周知徹底と、「男性でも育休を取っていいんだ」という雰囲気を広げたいです。
安藤 国家公務員の男性育休は進んできたから、2年後には地方にも波及していくと思います。仙台市も男性の議員さんや職員が当たり前に取得できるようになるといいですね。
伊藤 議員の中にも子育て当事者を増やしていきたいですね。
安藤 「空気を読むより空気を変えろ」です。FJ東北と力を合わせてぜひ!
竹下 パパはこうあらねばというんじゃなく、伊藤市議にはダメなところも含めて、身近なパパ像を発信して欲しいです。
安藤 「男性育休は社会を変えるボーリングの1番ピン」です。産後うつや虐待予防、女性活躍、働き方改革などさまざま課題に波及するはず。ぜひ仙台がリードして広げていってください。今日はありがとうございました。
取材・文/高祖常子(FJ理事、子育てアドバイザー)